日本と世界の死因の違い
日本の死因
まず、2017年に厚生労働省から発表された人口動態統計のデータを紹介します。男女を合わせた数字で見ると、死因の1位は「がん(悪性新生物)」、2位が「心疾患」、3位が「脳血管疾患」でした。その後に「老衰」「肺炎」が続きます。男性のみに絞ると、8位に「慢性閉塞性肺疾患」が入ってきます。これは、男性のほうが喫煙率が高いためだと考えられます。また、9位には「自殺」が入ってきます。女性のみの場合だと、9位に「血管性等の認知症」、10位に「アルツハイマー病」が入ります。どちらも老化に伴ってかかる病気です。
次に翌年2018年のデータを紹介します。1位と2位の死因は変わりませんが、3位が「老衰」になりました。老衰はここ数十年で数字が伸び続けています。これまで死亡診断書に「肺炎」と記載していたケースでも、実際には加齢による衰弱によるところが大きく、肺炎が直接の原因ではないと判断した場合に「老衰」と記載するケースが増えました。これは、日本呼吸器学会が発表した「成人肺炎診療ガイドライン」による影響が大きいと考えられます。このガイドラインは、QOL(クオリティー・オブ・ライフ)を重視した治療やケアの提供を推進するために、患者の状況を踏まえたうえで場合によっては積極的な治療を行わないことを推奨するものです。
世界の死因
では、世界の死因をみていきましょう。190か国以上が加盟しているWHOでは毎年、加盟国の健康関連統計データである「世界保健統計」を発表しています。その中の死因ランキングによると、1位は「虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)」、2位は「脳卒中及びその他脳血管疾患」、3位は「肺炎」です。
そして、これを国や所得で分けてみるとさらに違ったデータが見えてきます。まず、高所得国であるノルウェーやアメリカ、そして日本などの国々では、上位2つに加えて「がん」が多くなります。また、糖尿病や認知症が多く、高所得かつ長寿国ならではの傾向です。次に中所得国であるギリシャやポルトガルでは、結核やHIV・AIDSなどの「感染症」によって死亡するケースが多いです。また、交通事故などの「不慮の事故」で死亡するケースも多いです。そしてアフリカなどの低所得国では、中所得国よりもさらに感染症によって死亡する割合が多いです。15歳未満の死亡者が多く、死亡者全体の3割を占めます。また、「出産時の合併症」によって、母親と子どもが死亡するケースも目立ちます。
世界的に見れば感染症や栄養的な理由によって死亡するケースは減っていますが、低所得国では依然として多いままです。また、高所得国では感染症が減った一方でがんや糖尿病による死亡者数が増えています。